第6章 ドイツとは何か?
ドイツ文化の二つの危険性
(p162-163)

 それはそれで良いのですが、権威主義的文化はつねに二つの問題を抱えています。
 一つはメンタルな硬直性、そして、もう一つはリーダーの心理的不安です。
 全てがスムースに機能する階層構造の中にいると皆の居心地が良いのですが、ピラミッドの頂点にいるリーダーだけは煩もんに苛まされます。
 
 -あなたの念頭にあるのはヒトラーですか?

 いや、むしろヴィルヘルム二世です。また、誰一人として誰がそう決めたのか知らないうちに戦争に突入してしまった日本軍のことも考えています。
 硬直性の方は、しばしば乗り越えうるものです。
 ドイツ経済界のトップたちは、ユーロの死が彼らを危険に陥れることを良く理解しています。ユーロがなくなれば、フランスやイタリアが平価切下げに踏み切る可能性をふたたび手に入れますからね。そうすれば、それらの国の企業がドイツ企業に対しても競争力で上回るかもしれない。ですから、ドイツ経済界のトップたちの振る舞いは合理的かつ実際的です。彼らの移行はユーロの救出であり、アンゲラ・メルケルはそれに従う。
 しかし、各国の憲法にまで経済運営の絶対的規則を書き込もうとする意志のうちに、私は不安の表現を感じ取ります。まるで自由な人民と理性的な最高指導者を退場させ、その代わりに、最終的な権限を持ってドイツ人たちの問題を決定する自動的な権威を戴こうとしているかのようです。

 
 ドイツと日本の違いについては、日本の方が権威が分散されており、礼儀正しいと本書でトッド氏は述べておりましたが、基本的に大きな差異はないものと考えてよいと思います。
気になったのは「権威主義的文化は常に二つの問題、メンタルな硬直性とリーダーの心理的不安を抱えている」ということです。
 特に日本ではまともなリーダーが出てきにくいと言われていますが、日本、ドイツを初めとする直系家族の社会ではリーダーだけが心理的不安を構造的に抱えやすい社会である、という指摘には驚きました。

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