第6章 ドイツとは何か?
ドイツと日本の違い
(p160-162)

 -あなたの分析は、ドイツ文化の中に何か異常なものを想定していませんか?

 いいえ。ドイツ文化は完全に正常です!
 ただ、すべての人間文化がそうであるように、ドイツ文化にも非合理的なところがあるのです。
 ネオリベラリズムのシステムが危機に陥っています。内部矛盾のせいで崩壊するのです。すると、各国民はその国民なりのやり方で、それぞれ元々の文化に立ち帰ることによって対応します。
 ちなみに、私がこのことを強く印象付けられたのは、最近日本へ行き、津波で荒らされた地域を訪れた折でした。日本人の伝統的社会文化の中心をなすさまざまなグループ-共同体、会社など-の間の水平の連帯関係が、事態に対応できなくなった政治制度に代わって、地域の再建・復興を支えていたのです。
 ドイツに比べ、日本では権威がより分散的で、つねに垂直的であるとは限らず、より慇懃でもあります。
 このたびキャメロンとイギリス人たちは独仏の路線を敬遠したわけですが、あの拒否はおそらく、イギリスがその文化の最も深い部分-すなわち、自由への絶対的なこだわり(もっとも、この感覚はネイションへの集団的帰属を排除しない)-へ、危機を乗り越えるための手立てを探しに降りていく時期の初めを画するのでしょう。
 ドイツ経済がグローバリゼーションに適応したのも、ドイツ本来のあり方への立ち帰りと伝統的社会文化の強化を通じてでした。
 

 
 ”一度社会を支えてきたシステムが崩壊すると、それぞれの国民は、それぞれの元々の文化に立ち帰ることによって対応する”というトッド氏のこの指摘は大変興味深いものと感じました。
 旧ソ連崩壊前後の様子を取材した「あらかじめ裏切られた革命」においても、ロシアが復活できたのは西欧諸国が期待した西欧型民主主義をそのまま採用したからではなく、KGB出身のプーチンがロシア古来の権威主義的な手法を用いたからに他なりません。
 そして、今の日本は東日本大震災以来、国難の危機の真っ只中に置かれています。トッド氏は東日本大震災があった2011年の8月に、東北地域を訪問し、プレジデント社のインタビューに応じていました[1][2][3]
 そこで日本の読者に対して「現在、日本は東日本大震災のショックや、福島第一原発事故の処理で、大変な状況にあります。悲観的になる気持ちは十分に理解できますが、日本はこの危機を難なく乗り越えることができるでしょう。これは、数多くの苦難を乗り越えて発展してきた日本の歴史を振り返れば、そう断言できます。」と述べていました。

 日本の歴史を振り返ると、奈良時代、平安時代、室町時代、安土桃山時代、明治時代、戦後直後はいずれも海外からの優れた文物や技術者を呼び寄せて技術を学び、吸収して取り入れることで国難を乗り越え発展してきたという実績があります。今回もうまく乗り切るには、国民一人一人が海外からの優れた技術を積極的に学び、生活や仕事で積極的に活用していくより他ないのではと感じた次第です。

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