第6章 ドイツとは何か?
ドイツとフランスの違い
(p158-160)

 -フランスの家族も昔はだいたいおなじようなものだったのではないですか?

 パリ盆地の家族は直系家族とは正反対の原則の上に形成されていました。結婚適齢期に達した子供は自律的な家族ユニットを築くのが当然とされていたのです。
 遺産は男女関係なく子供全員に平等に分け与えられました。このシステムが培った価値は自由と平等です。自由と平等が、フランス共和国の標語となる以前に暗黙のうちに家族の標語だったわけです。

 -人口学的に観察される制度の違いによって、行動上の相違が説明されうるわけですね?
 
 ドイツとフランスに関する真実は、すべてが異なるということなのです。人口様態も、女性の地位も、家族の相互関係も、産業構造も…。
 しかし、なぜこの多様性をおそれなければならないのでしょうか。受け入れ難いのは、こうした差異が存在しないかのように振る舞うことです。ニコラ・サルコジが「ル・モンド」紙のインタビューに答えて、「われわれにドイツと食い違ったことをする権利はない。食い違いは衝突につながるから」(2011年12月13日付)と言っていましたが、あれでもって、仏独の状況と関係について彼が何一つ理解していないことが判明しました。
 彼の統治下で貿易のアンバランスが計り知れぬほどになったことを念頭に置けば、我が国の大統領の現実感覚について深刻な疑問を投げかける必要がありますよ。実際、ちんぷんかんぷんの内容の談話は丸ごと、フランス大統領の現実感覚を疑わせます。

 -でもどうしてドイツ人は、フランス人が拒否するもの、経済の引き締めは緊縮財政を受け入れるのですか?
 そうした規律と上下関係という価値観が浸透しているが故に、ドイツでは人びとが競争的なインフレ抑制策を受け容れたのです。個々人をかつては家族に、今日では集団に組み込むそうした価値のおかげで、国全体としての経営戦略を一致協力して合議するほどまでに組織された経営者団体も現れてくることができたのです。アンゲラ・メルケルは多分、その利益を代表しているにすぎません。
 

 
 フランス革命は「自由、平等、博愛」のスローガンが知られており、小さい頃学校で習ったときに自由と平等は両立するのか、内心疑問に思っていました。しかし、フランスでは結婚適齢期に達した子供たちは独立して、遺産も全員に平等に配分されるというトッド氏の説明で、フランス人は自由と平等は両立するのは当たり前と考えるのに大変納得できました。
 一方、フランスは人それぞれの環境が異なることを、ありのままに受け止めることができず、自分のやり方で考えがちだというふうに感じました。

 フランスとドイツははっきりと違うことがよくわかりました。と、同時に、フランスと日本もかなり違うということもよくわかった次第です。

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