第6章 ドイツとは何か?
ドイツと日本の類似性
(p157-158)

 家族社会学で直系家族と呼ばれる家族形態があります。長男を後継ぎにし、長男を両親と同居させ、他の兄弟姉妹を長男の会に位置付ける農村の家族システムです。
 さて、この種の家族はたしかに今ではもはや先進国に存在しないのですが、それでも長年お間に培った権威、不平等、規律といった諸価値を、つまり、あらゆる形におけるヒエラルキーを、現代の産業社会・ポスト産業社会に伝えました。
 この見地からいえば、まさにここで私はドイツ嫌いなどという嫌疑を払拭できると思うのですが、日本はドイツとほとんど違いません。
 日本社会とドイツ社会は、元来の家族構造も似ており、経済面でも非常に類似しています。産業力がたくましく、貿易収支が黒字だということですね。差異もあります。
 日本の文化が他人を傷つけないようにする、遠慮するという願望に取り憑かれているのに対し、ドイツ文化は剥き出しの率直さを価値付けます。
 
 -両国の人口の高齢化はもう一つの類似性ですね。

 この二国は世界で最も高齢化した人口の国です。人口構成の中央値が44歳なのです。フランスではそれが40歳なのですが。
 出生率は、フランスでは女性1名にあたり2人ですが、1.3人から1.4人の間で揺らいでいます。出生率のこのような差の背景にはもちろん、女性の地位の差があります。
 フランスでは女性は仕事と子供の育児を両立させることができますが、ドイツや日本ではどちらかを選ばなければならないことが多い。

 
 上記引用は、家族学者、人口学者として名高いトッド氏の研究成果の一つです。「直系家族」に関する特性について述べられています。「他人を傷つけないようにする、遠慮するかそうでないか」という細かいところの違いはあれど、まさに、日本とドイツとが大変近い状況下にあるといえると思います。

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