第6章 ドイツとは何か?
フランス人が発明し、ドイツ人が利用したユーロ
(p152-153)

 -でも、サルコジは南仏トゥーロン市での演説でドイツの持つトラウマに言及しましたよ。1920年代のハイパーインフレ以来のものだと言ってね。
 
 まさにそれが興味深いのです! トラウマが言及されたということ。われわれが言及することのできる唯一のドイツ的特性が病理に類するということ。
 ドイツ嫌いと戦っていると思われている連中が実は、ドイツとは大きな病人であるからけっして乱暴に扱ってはいけない、乱暴に扱ったら最後、かつての逸脱にも増して恐るべき逸脱を見るリスクを冒すことになってしまうから…といったふうにドイツを捉えて、その前で痙攣し、身動きできなくなっているようなのです。ニコラ・サルコジと、彼同様にドイツには格別の配慮をしなくてはと考える連中は、20世紀の混濁した歴史の中に閉じ込められています。
 彼らが未だに思い至らないのは次のことです。つまり、ドイツはフランスとは異なるけれども、強みと弱みを持つ正常な国だということ。ドイツは、単一通貨の考案者たち-彼らはフランス人でした-の過失により、支配的ポジションに置かれてしまったのです。特にそれを望んていたわけではないのにね。
 ドイツはこのポジションから利益を引き出しています。何故なら、誰もが遠慮して、一言も文句を言わないからです。
 もし人がフランスの政治的・経済的エリートたちに顕著なドイツ・ノイローゼから解放された自由な立場に立てば、ひとつのノーマルな世界の分析に立ち帰ることになります。すなわち、経済的・戦略的な力関係の世界です。そして、そこには、ドイツがヨーロッパのパートナーである国々と何ら協議することなしに策定した特定の戦略を展開しているありさまがみえます。

 
 今回のトッド氏の著書ではっきりとわかったことは、フランス人はドイツ人のことを「自分たちとは違う考え方を持っているけれども、それが正常である」という考えには至らず、「ドイツ人は正常人ではなく、病人である。へたに扱うと危険なので腫れものに触るように扱う必要がある」と考えていることでした。
 トッド氏が真に恐れているのが、ドイツの振る舞いに対してフランスが怯えるあまり、言うべき時に言えないために、結果としてドイツが独断で決めた政策にフランスが振り回されることであると私は感じました。
 
 直近ではドイツによるシリア難民問題の唐突な受け入れ表明や、ドイツの原発全廃、自然エネルギーへの移行に伴い送電網に大きな負荷がかかる問題など、ドイツの独断でフランスが振り回されておりますので、トッド氏の説明は大変腑に落ちました。

 いいかえると日本、日本人もその傾向があると考えられますので、日本人もドイツ人と同様な行動をおこしがちだということを覚えておくべきと考えます。

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