第5章 オランドよ、さらば! -銀行に支配されるフランス国家
ヨーロッパとはドイツ覇権の下で定期的に自殺する大陸?
(p142-144)

 -しかし、まだ完全には答えてくれていませんよ。あなたが今日話してくれたことを踏まえて訊ねるのですが、ドイツと正面交渉をするというのは、フランス社会党としてそんなに拙い考え方でしょうか?
 
 社会党の諸君は、ドイツ社会民主党が政権に返り咲いたら事情が大きく変わると信じたがっている。大統領選の前にも、ある社会党支部の面々を前にしての討論会でう、先ほど名前を挙げたカリーヌ・ベルジェが私にその説を突きつけてきたことがあった。
 しかし、ドイツで社会的に最も過酷な改革を実施したのは、ゲアハルト・シュレーダーが首相だった時期(1998年10月27日〜2005年11月22日)なのだ。
 ドイツの社会民主主義は、歴史的にも地理的にも、プロテスタンティズムの、したがってナショナリズムの系譜の中にある。彼らを相手にするのは実は、キリスト教民主同盟と付き合う以上に厄介だと思うよ。
 というわけで明白に、ドイツはまさに問題なのだ。フランスの政治家たちは、自国の民衆や中小企業に対してはあんなに過酷なくせに、仏独友好については今でもまだクマのぬいぐるみを抱えて遊んでいるような段階にとどまっている。
 しかしドイツは、すでに二度にわたってヨーロッパ大陸を決定的な危機にさらした国であり、人間の非合理生の集積地の一つだ、ドイツの「例外的」に素晴らしい経済的パフォーマンスは、あの国が常に「例外的」であることの証拠ではないか。
 ドイツというのは、計り知れないほどの巨大な文化だが、人間存在の複雑さを視野から失いがちで、アンバランスであるがゆえに恐ろしい文化でもある。
 ドイツが頑固に緊縮経済を押し付け、その結果ヨーロッパが世界経済の中で見通しのつかぬ黒い穴のようになったのをみるにつけ、問わないわけにはいかない。ヨーロッパは、20世紀の初め以来、ドイツのリーダーシップの下で定期的に自殺する大陸なのではないか、と。
 そう、ドイツに対しては「予防原則」が適用されるべきだ! このようにいうのは、卑劣な外国嫌いの態度ではない。歴史に学ぶ単なる良識だ。ましてあの国は、われわれの指導者たちの知らぬ間にパワーの論理に入っているのだから。
 ドイツにとって、ヨーロッパで覇権を持続的に保持する上での唯一の障害は、過去にそうであったように今日もやはりフランスだ。経済の面でフランスが最終的に潰え去ってしまわない限りは。
 しかし、この明白なことを認めるのが、われわれにとっては難しい。それは私も理解できる。このような力関係にふたたびお目にかかることはもはや絶対にないだろうとあれほど強く思っていたのだから。 
 

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