第5章 オランドよ、さらば! -銀行に支配されるフランス国家
場当たり的な「資産公開」は反民主主義的行為-国家と銀行の力関係
(p133-134)

 -その点に関して、慌てた政府が議員の資産公開を求めたわけですが、あのような政府の対応は、元予算担当大臣の不正行為と嘘から始まった危機との関係で的確だと思いましたか?
 
 いや、あれは最悪だね。透明性に関して煙幕を張るあの試みは、あんなことをするなら、オランドはデモクラシーにとって一つの脅威となる。彼自身が任命したカユザックが捕まった。そこで、彼はどうしたか?政界全体を疑惑の対象として指差す挙に出た! 重大な反民主主義的行為だよ。

 われわれはたしかに政権交代によって、反ムスリムで、反外国人で、反ロマ族のサルコジ政治が放っておいたあの悪臭からは解放された。1年前、優先事項はサルコジを場外に出すことだった。だから私はオランドを支持したことをけっして謝りはしない!
 しかし、社会党の政治家たちを見ていて不思議なのは、スケープゴートを指し示すというサルコジ流の戦略をやめた途端に、オランドも社会党も素っ裸で立ち尽くしてしまったことだ。
 彼らの姿をとおして現実の力関係が見える。とりわけ国家と銀行の間の力関係がね。
 私が思い浮かべるのは、小劇場(カフェ・ドゥ・ラ・ガール)のあの寸劇さ。暗闇の中に沈んでいる舞台。スポットライトが点灯する。一人の男が舞台中央の光の輪の中に現れる。素っ裸で-。これがオランドに起こっていることだね。

 

 この章を読み解いていくと、日本の大手マスコミではほとんど報道されていない、フランスの政治の様相がありありと描かれています。現在のフランスは、2009年に自民党から民主党へと政権交代が起きた時の日本の様相と大変似通っているように私は感じています。そして、日本時間11月14日未明にフランスでISによってパリ市内の劇場や競技場などに対し同時多発テロ事件が発生、128名が死去した事態が発生しました(asahi.com)。これと同時期にフランス高速鉄道TGVが試運転中に脱線し、技術者10名が死亡する事故も発生しました(ハフィントンポスト。)

 このような事態に陥ったため、オランド大統領はフランス全土に非常事態宣言を発令するに至り、現在緊張状態が高まってきています。まるで日本における3.11発生時さながらのようです。

 特に今回は、テロの犯人はシリアからの難民を装ったと思われます。そのためオランド政権に対してトッド氏が評価した、外国人や少数派に対しての差別撤廃への動きが頓挫することが考えられます。

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