第5章 オランドよ、さらば! -銀行に支配されるフランス国家
率先して脱税する予算担当大臣
(p132)

 で、私はさらに考えた。私はかりそめにも高度な心理洞察家とはいえないが、その私でも、医者のくせに病気にかかった人びとの治癒を目指すより、せっせと植毛クリニックの営業にいそしむカユザックのような人物に出会ったら、こいつは金の亡者に違いないと勘づいていただろう。ところがオランドは、そんな医者を大臣に抜擢した。いくらなんでも倫理的におかしいじゃないか。
 カユザックを選んだという事実が示唆するのは、大統領が倫理的本能を不十分にしか持ち合わせていないということだ。その後、大統領選挙に遡って、オランドがプールジェ市でアンチ富裕層の演説をしていたまさにあの時、彼の陣営の金庫番ジャン=ジャック・オージェが、タックス・ヘイヴンとして有名なケイマン諸島に口座を持っていたと知った。脱力したね…。
 

 人材を任命するのはトップの責任です。自身が訴え、当選に大きな役割を果たした「富裕層に対する重課税政策」を推進する上で、金融関係での人材登用は慎重であるべきです。しかしカユザック氏や、オランド大統領の金庫番であるジャン=ジャック・オージェ氏のような率先して脱税する人物を登用したという事実は、結果としてオランド氏は人を見る目がないこと、および、富裕層に対する重課税政策はただ単に票欲しさのために行ったのであって、その実は金融機関のいいなりとなっていることを示唆するように私も思いました。
 日本と同様、フランスも無能な人物がトップに就いているということで、トッド氏は大変焦っているのではないかと感じた次第です。

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